いつもお世話になっております、ルル区長です。
土木職の公務員として働いている方は工事を発注し、業務を進めていく中で請負業者から「前払金」の請求が来ることも多々あると思います。
皆さんはこの「前払金」について理解できていますか?
市役所や県庁で働く土木職の公務員ならずっと関係してくる制度だと思いますので、今回の記事ではそんな前払金制度について分かりやすく解説していきたいと思います!
前払金は請負業者の工事における資金繰りを改善するための制度です
まずは公共工事の前払金について簡単に説明しようと思います。
この前払金が何のためにあるかといえば、それは請負業者が工事に必要な資金を確保しやすくするためです。
工事を請け負った業者は工事を始める前に、専門工種について別の業者と下請契約を行ったり、工事に用いる資材を購入したりしなければなりません。
当然、これらのことにはお金が必要になります。
工事の規模が大きくなればなるほど、こうした初期費用も大きくなります。
こうした費用を早期に確保するために前払金制度があります。
そして、公共工事における前払金は国(国土交通省)による「前払金保証事業」によって制度が定められています。
以下に国交省が公開している前払金保証事業の資料のURLを貼っておきます!
この制度は、公共工事において業者がその資金繰りに苦難していたことから1952年から「前払金制度」が導入、その後1999年から地方公共団体に「中間前払金制度」が導入されました。
ちなみに国は先行して中間前払金制度を1972年に導入しています!
前払金を請求する際は請負業者は保証会社と契約を締結する必要があります
公共工事を請け負った業者が発注者(国・地方自治体)に前払金を請求する際は、保証会社と保証契約を締結する必要があります。
例を挙げると、「東日本建設業保証株式会社」や「西日本建設業保証株式会社」があります。
この保証会社にはもしも請負業者が倒産したり、契約解除になってしまった時に発注者が支払った前払金を弁済する役割があります。
また、保証会社は請負業者が受け取った前払金を適正に使用しているかの監査も行います。
よって僕たち土木職の公務員が発注した工事で請負業者から前払金の請求が来る際には、「前払金の請求書」と一緒に「保証会社との契約書」も一緒に提出されます。
発注者として制度をしっかり理解しておきましょう!
前払金には通常の「前払金」と追加で支払う「中間前払金」の2種類があります!
まずは前払金には種類があることを押さえておきましょう。
公共工事に着手してすぐに請求できる通常の「前払金」と工事の途中で追加で請求できる「中間前払金」の2種類があります。
「前払金」は請負代金額の4割以内、「中間前払金」は請負代金額の2割以内が限度額です!
ただし、全ての公共工事に対してこの前払金制度が適応されるわけではありません。
前払金制度は自治体により異なりますが、設計金額や請負金額が一定額以上の工事といったルールで運用されています。
ここから、この2種類の「前払金」についてそれぞれ詳しく解説していきます!
前払金制度は契約締結後すぐに契約金額の4割以内の額を請求できる制度です
通常の「前払金」は僕たち土木職の公務員のにとってなじみがあるものと思います。
皆さんもよくご存じのとおり、前払金は工事の契約締結後すぐに契約金額の4割以内の金額を請求することができます。
例として大阪市の「公共工事の前払金に関する規則」の条項を紹介します。
大阪市 公共工事の前払金に関する規則 第2条(前払の対象及び率)
前条に規定する工事又は測量(以下「工事等」という。)に関しては、当該工事等の請負人に対し、次の各号に掲げる工事等の区分に応じて、当該各号に定める割合を超えない範囲内で前払金を支払うことができる。
(1) 土木建築に関する工事(土木建築に関する工事の設計及び調査並びに土木建築に関する工事の用に供することを目的とする機械類の製造を除く。)で請負代金額が1,000,000 円以上のもの:請負代金額の 4 割
大阪市では請負代金額100万円以上の土木建築に関する工事において請負代金額の4割以内の前払金を支払えるようになっています。
注意点として前払金の4割という率はどの自治体でも基本的に一緒ですが、対象となる工事の金額は自治体によって異なる点には気を付けてください。
例えば、新潟市では請負代金額が250万以上の工事を対象としています。
自分の自治体ではどの金額以上で前払金対象工事となるか、把握しておきましょう!
中間前払金制度は、工事の進捗が1/2以上の時に契約金額の2割以内の額を請求できる制度です
次に中間前払金制度について解説します。
こちらは通常の前払金制度に比べて少しだけ複雑です。
中間前払金制度を簡単に説明すると、「前払金を既に受け取った工事」で「工期の1/2を経過」しており、「進捗額は請負代金額の1/2以上」である工事において「請負代金額の2割以内の額」を追加で請求できる制度です。
こちらも札幌市の制度を参考例として紹介します。
札幌市 中間前金払に関する制度の運用について
【対象工事】
北海道建設工事執行規則(昭和39年北海道規則第60号)に基づき、農政部、水産林務部、建設部が所管する発注工事のうち、前金払をするものを対象とする。
【中間前金払の割合】
請負代金額の10分の2に相当する範囲内とする。ただし、中間前払金を支出した後の前払金の合計額が請負代金額の10分の6に相当する額を超えてはならないものとする。
なお、低入札価格調査制度調査対象工事の場合における中間前払金を支出した後の前払金の合計額については、請負代金額の10分の4に相当する額を超えてはならないものとする。
【中間前払金支払いの条件】
(1) 工期の2分の1を経過していること。
(2) (1)の時期までに実施すべき工事が行われており、かつ、工事の進捗額が請負代金額の
2分の1以上であること。
工期が長く請負代金額の高い工事であれば、中盤で追加の資金を得ることができるので業者としては非常に助かる良い制度です!
僕たちは請求があれば事務処理が増えるので少し大変ですけどね笑
【重要】公共工事において中間前払金は部分払との選択式になります
ここで1つ中間前払金について重要な点を解説します。
工事の請負業者は契約時に「中間前払金」と「部分払」のどちらかを選択しなければなりません。
どちらも工事がある程度進んだ段階でお金を請求できる制度です。
ここが僕たち発注者側からするとふ~んって感じで流してしまいがちな所ですが、似ている制度でありながら業者側からすれば結構重要になってきます。
簡単に説明すると以下のとおりです。
- 中間前払金:支払限度額が少ない(上限2割)かわりに書類等の事務手続きが簡単
- 部分払:支払限度額が多い(上限9割)かわりに出来高検査が必要(手続きが大変)
大きく異なってくるのは支払限度額で、部分払はそれまでに行った工事の成果分を請求できるので支払限度額が大きいです。
その分、現場での検査や写真・出来形の書類を揃えなければならないので事務の手間は中間前払金と比べてかなり大変です…
中間前払金制度が無い時代には部分払しかなかったので、工事途中で資金繰りに困った業者はかなり苦労をしていたらしいです笑
どうせ支払い事務が発生するなら、手続きが簡単な中間前払金のほうが双方にとってありがたいですよね!
部分払の制度については詳しく別で記事を書こうと思っています!
まとめ
ここまで、公共工事における「前払金」・「中間前払金」の制度について解説してきました。
まとめると、
- 前払金は業者の資金繰りを改善するための制度
- 通常の「前払金」は契約後すぐに請負代金額の4割以内の額を請求できる
- 「中間前払金」は工事の中盤で請負代金額の2割以内の額を追加で請求できる
- 公共工事において「中間前払金」は「部分払」との選択になる
こんなところでしょうか!
この記事が土木職の公務員として働く皆さんの参考になれば嬉しいです。
これからも土木公務員に関する有益な情報を発信していきたいと思います!
それでは、失礼いたします。